救急救命士の講習に行った時のことだ。K消防署の会議室。消防士による
レクチャーの後、四人一組となって、AED(自動体外式除細動)を使った
実践訓練になった。
上半身だけのマネキン人形を、路上に倒れている人に見立てての訓練だ。
まずは、助ける役の人が「あっ、人が倒れている!」と人形に駆け寄る。
確かめると、その人は心肺停止状態。すると、そこに通行人がたまたま通りかかる。
助ける人は、その通行人に「AEDを捜して来てください」と頼む。
頼まれた人は「わかりました!」と言って、どこからかAEDを運んでくる。
その間、助ける人は心臓マッサージを続けるのだが、これが実際にやってみると
結構キツイのだ。
模擬訓練だし、みんなが見ている前なので、なんとなく照れくさい。だから、
みんなは、適当にこなそうとする。ところが、私のグループに、そうではない
オジサンがいた。
オジサンは、いきなり本気モードだった。
「あっ、倒れている!」ビックリするほどの大声で叫びながら駆け寄った。
「どうしました?どうしました?」人形の顔を容赦なくバシバシ叩く。
迫真の演技。オジサン、ここまでは良かったのだが、次でつまずいた。
「あなた!LEDを持ってきてください!」通りがかりの人に、大声で怒鳴る。
ところが言われた人は動かない。オジサンは間違っているからだ。LEDは電球だ。
「LEDです。あなた、わからないのですか?LEDです!」
オジサンは心臓マッサージを続けながら、真っ赤な顔をして通行人を睨む。
すると、通行人は意地になったのか、薄笑いをしたまま、その場から動こうとしない。
それを見て、オジサンはキレた。もう心臓マッサージはやっていない。
「笑っている場合か!早くLEDを持ってこい!」
オジサンのあまりの剣幕に、もう我慢ができず、チーム全員が吹き出した。
指導役の消防士も腹を抱えて笑っている。オジサンはキョトーンとしている。
まだ、何が起きたのか分かっていないのだ。
「LEDは電球。AEDですよ」誰かが言った。
そこで、オジサンは、ようやく自分の間違いに気が付いたようだ。
彼は、その後、憑きものが落ちたように急に大人しくなった。
頑張れオジサン!そうです。変な横文字を使っているほうが悪いのです。
「Devil Woman」
マーティー・ロビンス1962年のNo.1ヒット。
ビルボードでも16位だったこの曲を
トリニ・ロペスがカバーしました。
2014.7.9