近所の遊び仲間に、君とはもう遊ばないと言われた。小学4年生の時だ。
別の家に行って声をかけてみたが、やはり同じだった。
こうして何人目かに断られたとき、その理由が判った。
町内のボスが、私とは遊ばないよう命令を下していたのだ。
いま考えても、あの時、村八分された理由がはっきりしない。
おそらく、年下の私の態度が、生意気だったからかもしれないし、
ひょっとすると、家対家で何かあったのかもしれない。
それはともかく、その日から、町内には私の遊び相手がいなくなった。
でも、私は、一人でいることは、あまり苦にはならなかった。
それは、もともと性格的に一匹狼的なところがあるのと、本を読んでいるのが
大好きな子供だったからだ。
しかし、一人では野球ができない。私は、熱狂的な野球少年でもあった。
しばらく思案した私は、愛用のグローブを持って、隣の町内の子供たちが
いつも遊んでいる広場に向かった。
すると案の定、そこでは、子供たちが2組に分かれて、テニスボールを使い
楽しそうに野球の試合をやっていた。
隣の町内とはいえ、顔見知りの少年もいる。私は、その少年に声をかけた。
「仲間に入れてくれ」
「ダメだ」
「どうして?」
「自分の町内で遊べ」
「打たなくてもいい。守るだけでも・・・」
そんなやりとりをしているうち、私のいる外野の一角に人が集まってきた。
「どうしたんだ?」
顔見知りの6年生、E先輩だった。私は彼に、ここにいる事情を話した。
するとE先輩は、両チームの全員を集めた。
「こいつは俺の友達だ。すぐに試合に入れてやれ」
まさに鶴の一声だった。
私は、グローブを持って外野に走った。
2年後、私は中学生になると同時に、楽しみにしていた野球部に入った。
「おお、やっばり来たのか?」
「はい、よろしくお願いします!」
真っ先に声をかけてくれたのは、投手兼主力打者として活躍しているE先輩だった。
「Your Tender Loving Care」
バック・オーエンスの、このようなバラードが好きだ。
1967年の同名タイトルのアルバム、それと同時にこの曲も1位になっている。
2012.7.20