昔、漫画専門の貸本屋があった。その貸本屋は、駄菓子屋も兼ねていて、
私たち小学生は、毎日、そこに行くのが楽しみだった。
良く覚えているのは「影」と「街」という雑誌。サスペンス風の表紙が魅力的な
それらは、私たち子供に、特に人気があった。
その頃、東京ではどうだったのだろう?そこで、パッツィーに訊いてみた。
すると、彼女たちも、同じように「影」とか「牙」を読んでいたという。
漫画の貸本というのは、全国的なブームだったようだ。
乏しい小遣いをはたいて、ワクワクしながら読んだ漫画作家は、「辰巳ヨシヒロ」や
「佐藤まさあき」、それに「永島慎二」・・・
そうだ、「つげ義春」という個性的な作家もいたし、リアルな画風の「平田弘史」の
時代劇ものも大好きだった。
ちなみに「劇画」という言葉は、この時代にできたようだ。
ところで、この漫画貸本には苦い思い出がある。
3冊の漫画本、借りてきて読んだまではいいのだが、翌日、遊びに夢中になって
返却することを忘れてしまった。そして、しまったなぁとは思いながらも、次の日も
遊びに出掛けたまま夜になった。
そうなってくると、延長料金のことが大いに気になる。でも、ポケットには5円玉が
1個ぐらい。これでは返しに行けない。いったいどうしよう?・・・
その時、何を思ったか、私は、その本を押し入れの中に押し込んだ。そうやって
隠しておけば安心とでも考えたのだろうか?とにかく押し入れの奥深くに、返し
そびれた本を押し込んだのだ。そして1週間がたった。
学校から帰ると、母親が怒り狂っていた。
「借りた本はどうした?」
「えっ!・・・あれは・・・」
「早く出してきなさい!」
どうやら、貸本屋から連絡があったようだ。私は、押し入れのふすまを開けると、
奥の方に隠しておいた本を出してきた。そして、もう一度、思い切り叱られた。
「Am I That Easy to Forget」
カール・ペルー1958年のオリジナルヒット曲。
その後、スキーター・デイビス、ジム・リーブス、
レイ・プライスなど多くの歌手がカバーしていますが、
この曲、このオリジナルが一番だと思います。
2013.2.18