普段、何気なく使っているパソコン。これを使うようになった理由は、人により
様々だと思うが、私の場合は、実に切実な問題に出くわしたからだ。
会社時代、それまでは、嫌いだの機械に弱いだのと理由をこじつけて、パソコン
仕事を周りに押しつけて済ませていた。そんなことだから、会社が、パソコン教室を
常設しても、一度たりともそこに出席したことはなかった。
ところがだ。ある日、『今後の経費申請はパソコンで行う』とのお触れが回った。
どういうこと?管理部に訊きに行くと、自分で使った経費清算は、すべてパソコンで
行うのだという。
「つまり?」
「交際費とか会議費とか・・・いろいろな名目で清算している飲み代ですが」
「何か、とげのある言い方だなぁ」
「とにかく、自分でパソコンに入力しないと、会社からお金がでませんよ!」
「となると、パソコンが出来なければ全部自腹?」
「そういうことです」
一大事!こうなったら、嫌いでも苦手でも操作を覚えるしかない。決断が早い、
というか、変わり身が早いというか・・・私は6階のパソコン教室に走りこんだ。
広い会議室には、2人の生徒と派遣されてきたパソコンの先生、全部で3人いるだけ
だった。考えてみれば、今は始業がスタートしたばかり朝だ。普通の社員は、自分の
毎日の仕事に追われているはず。こんな時間に、のんびり勉強しているやつは誰?
1人は、しかっり者のCだった。やっぱりここにいた。
「出金できなくなるんで焦ったな、薩摩藩!」
「良く言うよ、会津藩のかた。自分もそうでしょう?」
「会津藩じゃない!二本松藩だ」
鹿児島出身のCとは、かつて、戊辰戦争のことで大激論になったことがある。
かくして、また新戊辰戦争になりそうになった時、一番後ろの席で、パソコンに
かじり付いている生徒から声がかかった。
「よぉー!ようやく来たな」
その生徒は社長だった。
「これは失礼しました。社長も出金清算の勉強ですか?」
思わず余計なことを言ってしまった。すると社長、応えていわく。
「違うぞ!私は、君たちが入力してきた出金をチェックして、
承認するかどうかを決定する。その操作を習っているところ」
「そうでしたか・・・」
「君たちの申請は、特に細かくチェックするからね!ワッハッハッハッ」
「・・・」
これがパソコン勉強のスタートだった。
だが、私はやらないと言い続けていた節を曲げるわけだ。だから、どうせ教わる
のならば、経費の入力だけではつまらない。よし、基本から覚えよう。
そう考えて、エクセルから始めることにした。
「Is Anybody Goin' to San Antone」
サンアントニオへ行こう!
チャーリー・プライド全盛期、1970年のNo.1ヒット。
次のステージで、パッツィーが唄います。
2013.3.24