大学2年の春、校内は入学式を終えた新入生であふれていた。
運動部や研究会などが、あちらこちらで看板を掲げ、新入生を取り込もうと
勧誘活動に大忙しだ。
ところが我がBig River、勧誘活動の気配も見せず、先輩たちが黙々と練習を
しているだけ。ウーン、このままでは誰も入ってこない。
ということは?私は、もう1年、楽器運搬係をやるはめになる。そこで、うちも
リクルートをしませんかと、部長に進言した。
「そうだな。それなら、お前が集めてこい」
「えっ、僕がですか?どうやって?」
「人がいるところで唄ってこい」
「恥ずかしいなぁ・・・」
すると、その場にいたMさんが、俺も一緒に行くと言いだした。
4年生のMさんは部員ではない。だが、なぜか毎日部室に通ってきて、気が向くと、
唄ったりして・・・長くなりそうなので、このMさんについては次回に述べる。
私が言いだしっぺだから仕方がない。ギターを担いで部室を出ると、Mさんも
ギターを抱えて後に付いてくる。そして、なぜかニコニコしながら、ハモろうぜ!
とか何とか言っている。
それはいいけど、いったいどこで唄えばいいんだ?人混みを見ているうちに
気後れがしてきた。なにしろ着のみ着のままの格好だ。といっても、他に
一張羅があるわけでもないが・・・
あぁ嫌だ。Мさんと二人でカントリーの流しか。ああぁ恥ずかしい。
さて、どうしたものかとキョロキョロしていると、向こうから、同じように
キョロキョロしながら、ブラブラ歩いてくる二人の女子学生がいる。
見るからに新入生だ。すかさず、Mさんが声をかけた。
「ねぇ、カントリーって、知ってる?」
「知りません!」二人は声を揃えた。
「じゃぁ、唄ってみようか?」
「・・・」
二人の返事も待たず、Mさんが、コットン・フィールズをやろうと言った。
よし!もうこうなったら仕方がない。やりましょう!
♪ When I was a little bitty baby My mama was・・・
二人の前で唄いきった。
結果、二人連れのうち一人の反応は「〇×△?」だった。
だが、もう一人のほうが興味を示した様子。とても良かったと言ってくれた。
えっ!そんなに僕の唄が良かった?君の音楽センスは素晴らしい!と、
声に出さずに私は言った。
そこで、部員でもないМさんが、すかさず入団交渉。
すると、その場で1人の入部が決定。
よかった!待望の部下、じゃなかった、待望の下級生が入って来た!
この決断力のある女子大生というのが、パッツィーだ。
おそらく、彼女はこれを読むだろう。そしてこう言うと思う。
貧乏くさい学生二人の流し、可哀そうだったからよ。
「Changing Partners」
1953年、パティ・ペイジによってリリースされると、
何と半年近くもヒットチャートをにぎわした不朽の名作。
次のリバティで、ゲストの佐生さんが唄います。
2013.5.4