夏休み、私たちは暇を持て余していた。無謀登山の三人組だ。
すると、Kがドライブに行こうと言い出した。ドライブ?車はないし、
高校生の私たちは免許を持っていない。
兄貴のバイクがある。運転はできるし、三人乗りでもOK!しかも、
山の方に走れば、おまわりさんはいないと言う。よし、それなら問題はない。
すぐに出かけることになった。
Kの家の軒先に真新しい大型バイクがあった。二人乗りのバイクに三人で
乗ると、後ろの座席が少し沈み込む。だが、あまり気にならない。
Kの無免許運転も結構上手だし、走り出すと、風が顔に当って気持ちがいい。
しばらく走ると、山間に小さな集落があった。小川の淀みで、坊主頭の
三人が水遊びをしている。橋の上から眺める水はきれいだ。バイクを停め、
河原に下りて行った。
Kが、三人の中で一番大きい子供に名前を訊いた。
「一郎」 水の中から答える。
「それじゃ君は?」 次に、二番目に大きい子供に訊いた。
「二郎」
すると、一番小さい子供が、何か言おうとする。年は、四才ぐらいだろうか。
「えーと、えーと、僕は」
「言うな、それ以上言うな。君は三郎だ」
「!・・・」
三人のビツクリ顔は、まるっきり同じような顔をしていた。子供たちは、
どうして、三郎の名前を言い当てたのか、不思議でならないようだ。
何だか可笑しくて、私たちが笑った。すると、川の中の子供たちまでが、
一緒に笑い出し、それから、しばらくの間みんなで笑った。
楽しいドライブを終えKの家へ。ところが、そこで問題が起きた。
三人が降りても、バイクは後ろに傾いたままなのだ。過重積載のせいだ。
後輪のバネが元に戻らない。どうしよう・・・
後ろの座席を持ち上げたりして直そうとしたが、どうにも元に戻らない。
これじゃ兄貴に叱られるとKは焦る。だけど、どうやっても水平にならない。
もうダメだ。Kの兄貴は怖そうだし、もう帰ってくる頃だ・・・
肩を落としたKをそこに残し、私とTは、その場から静かに退散した。
それ以来、私は、Kの家に遊びに行かなくなった。
≪Walkin' Back ライブのご案内≫
場所 笹塚リバティベル
日時 11月20日(水) 19時30分演奏開始
「There Gose My Everything」
1966年ジャック・グリーンで大ヒットしました。
今度のリバティで、パッツィーが唄います。
22013.11.16