日曜の朝、夕張市長の鈴木直道氏がテレビに出ていた。
彼を見るのは実に久しぶり。2011年、夕張市長選挙のニュース以来だ。
かつて炭鉱の町として栄えた夕張市。1960年には16万人もの人口があった。
だが、エネルギーの転換政策により炭鉱は閉山。当時の行政は、生き残りを
かけて、テーマパークを中心とした大規模なリゾート開発や、夕張映画祭の
開催などの観光事業に着手した。
ところが、この過剰投資が裏目に出て、どれもうまくいかずに赤字を累積する。
そして、あろうことか、その実態を巧みに隠蔽してしまう。しかし、それも
やがて発覚、結果、自力再生は不可能と判断され、2011年に全国初の財政再生
団体に指定された。こうして夕張市は、353億円という大借金返済の道を歩む。
国の管理下による再建計画は厳しい。市の職員数は半減し、しかも給料4割カット。
市民税・上下水道料などは軒並み大幅値上げ。さらにゴミ出しは有料に。
それだけではない。6校あった小学校は1校に、3校あった中学も1校に統合。
夕張市立総合病院は診療所に縮小された。
こうして絞り出した資金は、気の遠くなるような借金の返済に充てられるのだが、
このような「最高の費用で最低のサービス」の結果、人工の流出は止まらず、
最盛期16万人の人口は、2013年には、ついに1万人を切ってしまった。
この夕張市に飛び込んだのが、鈴木直道氏(30才)だ。
彼は、東京都職員として、財政破綻した夕張市に2年間派遣された後、ボランティア
仲間の後押しで市長選に出馬。選挙戦を勝ち抜き2011年に見事当選する。
日経のコラムによると、彼は、立候補のために都職員を退職したのだが、その決断
までには相当の苦悩があったようだ。なぜならば、仮に夕張市長に当選したとして
も、月収は手取で20万円に満たなく、都職員時代の年収より200万円近く減って
しまう。さらに、彼は結婚を控え、ローンを組んで埼玉県に家を買ったばかり。
だが、彼は、夕張市長選に出馬を決意する。
「29歳・無職・金なし・政党推薦なし」(本人談)の鈴木氏は、自分のことをよく
知ってもらうために、雨の日も、風の日も、吹雪の日も、4ヶ月間1日も休まずに
夕張の住民に会った。その数、全世帯数が約6,000の夕張で、5,700世帯を超えた
というのだから凄い。
そこに至るまでの彼の経歴はこうだ。
高校時代に両親が離婚。彼は、経済的な理由から大学進学を断念する。
同じ理由から大学を中退した姉は、酒屋のレジ打ちをしながら猛勉強、見事公務員
試験を突破し地元市役所の職員となる。
それに刺激を受けた高校生の彼は奮起する。彼も、姉の後を追って猛勉強を開始、
トップクラスの成績で公務員試験に合格。ついに念願の東京都の職員となった。
都職員の2年目。仕事にも慣れ、入学金も準備した彼は、法政大学法学部の夜間で
地方自治を学ぶことに。同時にボクシング部にも在籍したので、毎日が超ハード
スケジュールだ。
朝は8時前から仕事開始。昼休みにはロードワーク。仕事を終えてから21時30分
までが授業で、それから23時までが部活。疲労のため、武蔵野線の電車の中で
意識を失ったこともあったそうだ。彼はこれを4年間やり通した。
「鉛筆一本買うのにも国にお伺いを立てる必要がある町」
こなんふうにささやかれる財政破綻の夕張市。
若年層の流出で、我が国の中でも有数の高齢の町と化した夕張市。
この町で、30才の鈴木直道市長は奮闘中!
「I Love You More Today」
コンウェイ1969の作品。 No.1ヒットになりました。
2014.7.15