「デーブ大久保」こと大久保博元さんが楽天の監督に就任した。
思い出すのがAさんの話。その時、私は少年硬式野球のコーチをしていて、
Aさんはチームの事務方のトップだった。
関東地方を襲った突然の大雪でAさんの車はスリップ、側溝に脱輪した。
いろいろ工夫を凝らしてみたが、とても一人じゃ無理。夕闇が迫る中、
困り果てていると、そこに1台の車が通りかかった。
手伝いましょうか?と、車から体格のいい二人の若い男性が降りてきた。
それが西武ライオンズの若獅子、捕手の伊東勤さんと大久保博元さんだった。
二人はともに球場近くの合宿所暮らし。ライバル同士で町まで買い物をし、
帰る途中だったらしい。
さすが力自慢のアスリート二人。すぐにAさんの車は救出された。
喜んだAさんは、二人を自宅に招きお茶の接待をした。その時の二人の様子を、
Aさんはこう語る。正捕手のポジションを手中にしつつあった伊東さんは、
寡黙で、少しとっつきにくい感じがした。ところが大久保さんは正反対。
大きな声で気さくに何でも話したという。
野球人同士ということもあり話が盛り上がり、大久保さんは、高校時代のことを
語り始めた。水戸商業に怪童あり。大久保さんがプロから注目を受け始めた時、
西武ライオンズの実質的なGMである根本管理部長が、大久保の練習を見に来る
ことになった。
根本氏が見たいのは、もちろん大久保の長打力。それを知った水戸商の野球部員
たちは一計を案じた。よし、それなら、彼がホームランを連発するところを見せ
てやろう。仲間たちは、校庭に張る外野フェンスを、いつもより前に張り直す
ことにした。
たかが数mほど前に出したフェンスだが、その差はとても大きい。準備完了!
そこに根本さんが登場して、いよいよフリー打撃開始。満を持した大久保選手が
打ち始めた。
するとどうだ。1球目から打球は外野フェンスを超えていく。次もホームラン。
その次もホームラン。大久保選手がバットを振ると、ボールは次々と仮設フェンス
を越えて行く。天性のロングヒッターの打球は当り損なってもオーバーフェンス。
少々詰まっていてもホームラン。凄いことになった!
それを見た根本さん。その長打力に大変驚き、大久保選手が打ち終わると、
いそいそいと帰って行った。そして、西武ライオンズは、その年のドラフト1位に
大久保選手を指名した。
ところが、プロのポジション争いは激しい。大久保選手は、正捕手の座を獲得した
伊東選手をなかなか抜けずに、控えに甘んじることが多くなった。その時、大久保
選手の打撃才能を惜しんだ根本氏は、常時出場の道を拓いてやるために、大久保
選手をシーズン途中で巨人に放出した。
時がたち、大久保さんは、今年、楽天イーグルスの監督となった。彼の打撃理論と
熱血指導ぶりは有名だが、それだけで、チームを率いていくことはなかなか・・・
彼の、監督としての手本は「人情味のある親分」根本さんかもしれない。
「Excuse Me」
バック・オーエンスのヒット曲、1960年に2位になりました。
我がWalkin' Backのレパートリーでもあります。
2014.11.12