演奏の合間、ギターのТくんが話しかけてきた。彼の家にツバメの巣ができたらしい。昔から、ツバメの巣ができるのは吉兆とされるが、それにしては浮かない顔。訊いてみると、生まれたヒナがカラスに襲われたという。
以前、我が家でも同じ経験をした。親の姿を見ると、ヒナたちはくちばしを大きく広げてエサをせがむ。エサを与え終えた親鳥は、何度も何度もエサ捕獲へと飛び立つ。我が家のヒナは巣立ち直前に襲われた。空っぽになった巣を見て、パッツィーは泣きだしてしまった。
Тくんが気付いたのは、襲撃された直後らしい。丁度、そこに戻ってきた親鳥。しばらくの間、鳴き声を上げて探し回ったが、子供たちはどこにもいない。やがて、諦めたのか、どこかに飛んで行ったという。自然界の出来事とはいえ、つらい光景だ。
頭のいいカラスは、ヒナが「食べごろ」になるまで待つという。毎日ツバメの巣を巡回し、巣立ちが近づくとその偵察頻度を上げる、何とも狡猾な鳥だ。こんなカラスから、ヒナたちを守る方法はないものか。
調べてみると、いい「防御法」があった。カラスは「ホバーリングができない」ことを利用したもの。空中停止ができないカラスは、地面から羽ばたきながらジャンプして、くちばしで巣から卵やヒナを地面に落として食べるという。
これを防ぐには、巣のそばに「ツバメは通れるが、カラスが羽ばたいて通れない間隔」で障害物を置けばよいというもの。鳥は、翼に異物が当たるのを極端に嫌うらしい。なるほど、これならカラスの襲撃を防げるかもしれない。そこで、その障害物をどう作るかだ。
これを考えた人は、巣の下の部分から天井に向けて、黄色い糸を30センチ間隔で数本貼り付けて成功したようだ。しかし、巣の場所というのは、それぞれの家で異なるので、縦に張るとか横に張るとか、その場所にあった張り方を工夫する必要がある。
次はこの「防御糸」を設置するタイミング。これを考えた人は、卵を産んでメスが座り始めたらすぐに糸を張ることを奨めている。抱卵が始まらないと、ツバメが驚いて巣を放棄して、逃げてしまう恐れがあるからだ。
被害の翌年、我が家の巣にツバメが戻ってきた。来年、もしТくんの家にもツバメが戻ってきたら、この「防御糸」を試してみたらどうだろう。「ギター弾き」が張るのは、もちろんギターの弦。マーチンの弦かギブソンの弦なら、カラスが引っかけたとき、いい音が出るかもしれない。
「Peace in the Valley」
1937年に作られたゴスペル。
以降、多数のカバー版がヒットしていますが、
ここでは、コニー・スミスで。
2016.7.13