日本ダービーのニュースを見ていて、昔のことを思い出した。競馬をやめてから何十年も経つが、社会人になりたての頃は競馬が好きで、よく東京競馬場に通っていた。その日は、何の記念だったかは覚えていないが、大きなレースがあって競馬場は超満員だった。
私とパッツィーは人混みを避け、そんな時だけに開放される内馬場にいた。実はその日、給料日前か何かで財布にあまりお金が入っておらず、二つぐらいのレースを二百円券で数点買ってのんびり遊び、帰り道が混雑する前に早めに引き上げようと思っていた。
次のレースの締め切りまでには少し時間があった。とにかく少し馬券を買ってみようと思い、空いている売り場の列に並んだ。そして、大した配当にはならないが、ガチガチの本命から数点流し、あとは何となくという感じで二百円の連勝券を八枚買うことにした。
順番がきたので窓口へ購入申し込み券を出した。すると受付の女性は「八千円になります」と言う。えっと思った。全部で千六円のはずだ。もしかして・・・売り場窓口の上にあるプレートを見ると、そこには「特券(千円券)購入窓口」と書いてあった。
どうりでこの窓口だけが空いていたはずだ。その時「スミマセン間違いでした」と言えばよかったのだが、見栄もあったのだと思う、その言葉が口から出てこなかった。しかし、財布の中身を見ると九千円と小銭しか入っていない。
覚悟を決め、八千円を財布から出した。給料が五万円ぐらいのときの八千円だ、馬券を受け取るとき少し手が震えた。パッツィーのところに戻り、馬券を見せると彼女は驚いても「どうしたの?」。わけを話すと思いっきり叱られた。
ファンファーレが鳴った。不安が高まる中、馬は一斉にスタートした。レース経過は覚えていない。ゴール前では大混戦だった。数頭がダンゴになって入ってきたので、レースが終わった直後、自分の馬券が的中したのかどうかわからなかった。
着順を知らせる電光掲示板に数字が出たので、そこの一着二着と、手にした馬券を急いで確かめた。すると的中している馬券が一枚! 思わずバンザイしかけたが、まだ数字は点滅中だ。じりじりしながら待つと、ついに確定ランプが点いた!
人気馬券だったので配当金は少なかったが、馬券代金は無事回収、さらに数千円だったが利益もでた。そのあとの記憶はあやふやだ。たぶんホッとしたら急に疲れが出て、早々に退散したのだと思う。私とパッツィーは、これを最後に競馬をやめた。間違い購入で懲りたからではない。それからすぐに子供が生まれことになったからだ。
「Oh Donna」
映画「ラ・バンバ「の中で、ロス・ロボスが唄いました。
オリジナルはリッチー・ヴァレンス。ビルボードで2位になりました。
私の愛唱歌でもあります。
2017.6.3